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詳しい説明

「振動のこと」での「身近な例」を、数式を使って説明してみます。

ある量を繰り返す振動は時間に対して次式で表されます。
X=A×sin(ωt) (μm)・・・(1)
ここで 
A:振幅(μm)・・・振動波形の大きさ(最大値)を表わします。
f:周波数(Hz)・・・1秒間に繰り返す波の数を表わします。
ω:角周波数(rad)・・・ω=2πf
T:周期(sec)・・・繰り返しの時間

周波数1Hzのときの(1)式を図で表すと、下図のようになります。

現象として、
    小刻みな振動→周波数の高い振動
 ゆっくりとした振動→周波数の低い振動
のことです。

小刻みな振動はなぜ目で追えなくなるのか、それは小刻みな振動の方がゆっくりした振動よりも力が大きいことが原因です。
自分の手を使って簡単な実験をしてみましょう。握りこぶしをゆっくりと、30cmの幅で振ってみてください。その振り幅を変えずに、小刻みにこぶしを振ろうとすると大きな力が必要になり、手首がくたびれてしまいます

上の振動現象を数式で表わします。

力F(N)は F=M×α(N) で表わされます。

ここで M:質量(kg)
     α:加速度(m/s2)

加速度(acceleration)というのは車のアクセルで使われていることばで、この力は電車の発進、停止のときに進行方向に体に感じる慣性力というものです。


発進の時は正(+)の加速度をかけ、停止の時は負(-)の加速度をかけるといいます。力は加速度に比例します。

加速度は数式では α=(d2x/dt2)

(1)式の変位量Xの二階微分になります。

X=A×sin(ωt)より

α=(d2x/dt2)=-A×ω2×sin(ωt)=-ω2×X・・・(2)

絶対量でいえば

加速度α=ω2×変位X=(2πf)2×変位X  となり

変位(=握りこぶしの振れ幅)が一定であれば、周波数fが低い場合と比べて周波数fが高くなると、加速度量が大きくなることがわかります。
こぶしの質量Mは一定ですから同じ振り幅(変位)で周波数f(Hz)を高く(小刻みに)振ると、力がより多く必要となり手首がくたびれるのです。

つまり、振動の大きい電車内で本を読むためには、目と手に高い周波数の振動を伝えないような体の構造によるバネ効果が必要になるのです。

電子顕微鏡の像障害をなくすには、人体と同じようなやわらかいバネの構造を用いた除振システムを構築することが必要です。除振システムにより、高い周波数の振動を、低い周波数の振動に変換することで、電子顕微鏡に像障害のない環境を作り上げることができます。